LAVAの男性インストラクターが乗り越えた葛藤「周囲に合わせない勇気が、チャンスを広げる」

2019.8.28
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マイノリティーを逆手に取れ!
「白一点男子」の仕事観

さまざまな仕事で女性の積極活用が行われるようになり、女性の働き方は変わりつつある。
とはいえ、まだまだ男性比率が高い職場が多かったり、職種によっては「男性の仕事」という世間のイメージが根強く残っていたりと、少数派であることに息苦しさを感じている人は多いもの。そんな人は逆に、女社会でマイノリティーとして働く男性の仕事観を覗いてみては?
紅一点ならぬ「白一点男子」の姿から、今の職場で前向きに働いていくためのヒントが見つかるかも!


ホットヨガスタジオLAVA渋谷店 インストラクター
吉形 大介さん
大学卒業後、LAVAを運営する株式会社ベンチャーバンクに入社。約半年の研修を経て、ホットヨガスタジオLAVA渋谷店に配属。
同店唯一の男性インストラクターとして活躍している

ヨガのイメージと正反対だからこそ、チャンスがあると思った

Tシャツから伸びる筋肉質の太い腕。一見して日頃からよく鍛えていることが分かる吉形大介さんの職業は、ホットヨガのインストラクターだ。
吉形さんの勤める『ホットヨガスタジオ LAVA』では、1553名のインストラクターのうち男性は21名だけ(※2016年4月1日時点)。
わずか1.3%のマイノリティーの世界にいながら、今日も笑顔で働いている。

「学生時代に就職サイトでうちの会社のページを見付けたときも、写真に写っているのは女性だけ。
男性はダメですって断られたらどうしようってビクビクしながら説明会に行ったのを今でも覚えています(笑)」

幼少期から筋金入りのわんぱく少年。喧嘩になれば取っ組み合いになるような男家系で生まれ育った。
友達もほとんどが同性。小学3年から始めたバスケは今も続けている。

「バスケのトレーニングの一環でヨガはやったことがあったけど、就職前の僕にとってホットヨガはまったく未知の世界。
選考を受ける前に、実際にスタジオでホットヨガのレッスンを受ける機会があって、そのときに初めて体験しました。
人生でこんなに汗をかいたことはなかったってくらい汗をかいて(笑)、最高にサッパリした。この感覚を伝えたいなと思ったのが、LAVAで働きたいと決めた一番の理由です」

愛嬌のある笑顔とは対照的に、周囲の人からは“気が短い”と言われることがよくあるそうだ。
好きな食事も「ラーメンにビール!」という男メシ。ヨガで連想されるようなスローライフとは正反対。
就職先を聞いた友人たちは、「お前が!?」と目を丸くした。200名の同期のうち男性は4名。だが、怯む気持ちはまったくなかった。

「むしろ面白いなって。自分の性格はいわゆるヨガのイメージとは正反対。それに、男性が少ない職場だからこそ、目立てるチャンスがあるんじゃないかなって思ったんです」

男性である遠慮を捨てたら、お客さまの反応が変わった

それでも、実際に入社してみると困惑することは多かった。インストラクターとして向った研修先は女性専用スタジオ。
店内に踏み込めば、不審者のような目で見られることもあった。男性用の更衣室がないため、着替えは物置。
女性に比べて筋肉の多い男性の体は硬く、柔軟性が求められるヨガのポーズの習得には時間を要した。

現在の渋谷スタジオに配属が決まり、正式にインストラクターとしてデビューした後も悩みは尽きない。
中でも苦慮したのが、お客さまにいかに信頼してもらうかだ。

「僕が入社した当時は、今よりももっとホットヨガをする男性が珍しい環境でした。だから、最初はインストラクターが男性であることに、動揺や抵抗感を示す人もいましたね」

ホットヨガは、基本的にはキャミソールやブラトップなどの軽装で行う。レッスン中、お客さまのポーズを手直しするために、直接肌にふれる機会も多い。
その瞬間、相手の体が強張るのをダイレクトに感じた。中には、思わず吉形さんの手を払いのける人もいたと言う。

「僕自身も最初は恐る恐るというか、どう接していいのか分からず、妙な遠慮をしていたと思います」

それから吉形さんが心掛けるようになったのは、「遠慮はしない」ということだった。

「僕が引け目を感じて、ポーズ調整のサポートを遠慮していると、お客さまは余計に気持ち悪くなるだけ。『失礼します』と一言断って、堂々と触れる分にはやましさなんて感じない。そう割り切って仕事ができるようになってからは、お客さまも僕のことを受け入れてくれるようになりました」

今では仲の良いお客さまからは「大ちゃん」のあだ名で親しまれている。その人なつっこいキャラクターと熱心な指導は次第に評判を呼び、CS(顧客満足)アンケートも急上昇。社内表彰の対象にエントリーされた。

「男性の声って、熱が入ると女性とはまた違った気合いの入れ方ができると思うんですよね。だから僕は、お客さまにレッスン中に頑張ってほしいときは、語尾を強めたり、声に気持ちを乗せるように意識しています。そうすると、他の女性インストラクターと同じ内容のレッスンをしていても『体への負荷が全然違う気がする』ってお客さまから喜んでいただけるんです」

マイノリティーだからと言って周囲に合わせる必要はない

最近では、『ホットヨガスタジオ LAVA』に通う男性も増加傾向だという。そこで吉形さんが取り組んでいるのが、男性専用講座『俺ヨガ』だ。

前任者の産休に伴い、自ら担当に名乗りを上げた吉形さんは、現在月2ペースで『俺ヨガ』のレッスンを実施。最初は1回の開催で1~2名と開催が危ぶまれるほどの受講者数だったが、1年間の努力が実り、今では10名前後の受講者が集まり安定的な人気をキープしている。

「女性のお客さまはヨガに癒しやリラックスといったメンタル的な要素を求める方が多いのですが、男性だとフィジカル面への関心が強い。『たっぷり汗かいて体を鍛えて、うまいビールを飲むぞっ!』ていう感覚で受講してくださっています。男性の体のことは同じ男性である僕の方がよく分かりますし、みんなで一緒にキツいメニューをヒイヒイ言いながらこなしていく一体感も同性だから分かち合える側面がある。そういう意味でも、自分が男性であることが強みになっていると思います」

その力強い言葉を支えているのは、入社以来抱き続ける彼の信念だ。

「たとえ女性社会の中にいても、自分は男性なんだっていう意識を忘れないこと。変に周りに合わせたり、自分を変えたりする必要はないのかなって。ちゃんと自分の考え方をブラさずに、自分はこういう人間なんだってアピールをしていれば、いつかきっと目に留めてくれる人が現れるし、評価もしてもらえると思っています」

わずか1.3%のマイノリティーの世界に身を置きながら、活躍の場をどんどん広げる吉形さん。その秘訣は、少数派であるということを自分のチャンスと捉える前向きな思考。そして、無理に周囲に迎合するのではなく、自分の強みを理解した上で毎日の仕事に全力で取り組む姿勢だろう。

取材・文/横川良明 撮影/洞澤佐智子(CROSSOVER)

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こちらの記事は、「Webマガジン Woman type」コンテンツから転載をしております。